掛け合い「幻声橋(げんせいきょう)」(20分前後)複数人用


ルール

・一人称、語尾変OK、性別変更OK

・使用の際には下にコメントを残していただき、使用先で

「(台本のタイトル)」 

「まつかほの台本」(もしくは「作者まつかほ」)を明記してください。

このホームページのURLも併記してくださると嬉しいです。

・コメント欄に使用場所のリンク等を貼ってくださると僕も聞きに行けるので助かります!

・BGMはご自由につけていただいて構いませんが、BGM作者様がいる場合には許可を取ってからつけてください。

・読めない漢字はご自分でお調べください。

 ・本文のコピペは禁止しております。どうしても必要な場合はお問い合わせください。

・詳しくは台本使用に関する注意事項をお読みください。

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N(ナレーション)、黒猫:男女不問。兼役可。途中男声女声入れ替わってもOK。

A:Bの親。Bに対して過干渉なところがある。最近Bに好きな人ができたことでBに疎ましがられているのが気に入らない。

B:Aの子供。Aからの依存気味な干渉にうんざりしている。Cに好意を寄せていて良い雰囲気になりつつある。

C:Bの同級生。Bからの好意は嬉しいものの友達付き合いも大事にしたくてなかなか一歩踏み出せない。

D:Aの幼馴染でありCの親。Aのことを憎んでいる。

 

 

あなたにとって「声」とは、どのようなものですか?

諸説在りますが、一番最初に人の記憶から無くなるのは声だと、言われているそうです。

その人を表す大事な音、声。それを一番に忘れてしまうのは、やはりその人への執着を早くなくすためなのでしょうか。

このお話をあなたは誰の声で聞きたいですか?

 

以下台本

(台本中の~~~は場面転換を表しています。時間を数秒取るとわかりやすくなると思います。)

 


 

振り返ったことで愛する妻を死の神に取られてしまった神話は、ご存じの方も多いかと思います。実は、日本にも似たようなお話がいくつかあるんだそうです。揺らぐ声に心をとられて振り向くと…。その声は耳幻(みみまぼろし)なのか、あるいは本人なのか。

幻声橋(げんせいきょう)。あなたが聞こえた声にはどんな思いがこもっていたのでしょうか。

あなたは振り向かずに、その橋を渡り切れるでしょうか。

さぁ、声が聞こえてきましたよ。

 

黒猫

もし。もし。いい加減起きなさい。いつまで冷たい地面の上に寝ている気だい?

 

A

うぅ、ん。

 

黒猫

やっとお目覚めか。

 

A

こ、こは…あれ…私…今の声は…。

 

黒猫

私だよ。

 

A

ねこ!?え!ここはどこ!?私どうしてここに。えっと、どこかに誰かと行こうと…。

 

黒猫

まぁ落ち着きなさい。まずは私の話を聞いて。

 

A

…私、頭でも打ったのかしら。そもそもここがどこだか…。

 

黒猫

ここは幻声橋。よく見てみなさい。橋が架かっているでしょう。

 

A

…本当だ。

 

黒猫

君は今、夢を見ている。こちらからあちらの崖に橋を渡って行けなければ二度と目が覚めない。

 

A

渡るだけでしょう?

 

黒猫

そう渡るだけ。しかし途中で振り返ってしまうと君は崖の下に落ちてしまう。

 

A

夢なら落ちたってそのうち起きるんだから別に

 

黒猫(さえぎって)

言っただろう。渡れなければ二度と目覚めない。

 

A

随分変な夢ね、これ。やけにリアルだし。橋だけ真っ赤で暗くて不気味だし、猫はしゃべるし。早く起きて出かけなきゃ。…そうか、そうよ。私は車に乗ってみんなと旅行に行く途中だったじゃない。なんでこんなところで…ねぇ!あの子は!?あの子はどこよ!?私の大事な娘。私があの変な虫から守らないと。まさか二人きりでいるんじゃ

 

黒猫(さえぎって)

君は随分その娘さんに構っているようだな。

 

A

親なんだから心配して世話を焼くのは当然でしょ。私の大事な一人娘。私の言うことを聞いていれば幸せになれるのに、あの子ったら最近反抗的で。もしあのいけ好かない虫があの子に変なことをしたら、いくら幼馴染の子供だからって許さないわ!

 

黒猫

それもこの橋を渡れればすぐわかる。

 

A

たかが夢でしょ?さっさと渡って早く起きなくちゃ。

 

黒猫

いいか。絶対に振り返ってはいけない。振り返ったら二度とその娘さんには会えないと思え。

 

A

ふん。何よ脅しちゃって。意味が分からないわね全く。

 

~~~~~~~~

 

B

う~いたたた…。ここ、どこ…。

 

黒猫

おっ、起きた?

 

B

わっ!猫がしゃべった!!なにこれ夢!?

 

黒猫

そ、夢。夢見てるのさ。君は今いろいろあって夢の中にいる。で、この橋を振り向かずに向こう岸まで渡り切れたら君はまた目が覚める。

 

B

なにこれ…真っ赤な橋…まるで三途の川みたい…私死んだの?

 

黒猫

まぁ渡り切れなければ二度と目が覚めないから、似たようなもんかな?

 

B

ニヤニヤして気持ち悪い猫ね…とにかく渡ればいいんでしょ?早く渡って起きなくちゃ。せっかく彼と旅行来てるのに時間がもったいない!

 

黒猫

振り向かずに、ね。

 

~~~~~~~~

 

黒猫

あ、目が覚めた?

 

C

な!?なんだ!?猫がしゃべった!?

 

黒猫

はいはい。猫がしゃべっちゃ悪いわけ?今からあなたに大事な話をするんだから、にゃーにゃーだけじゃあなたわからないでしょ?

 

C

大事な話って…だってさっきまで車に乗って、みんなと旅館に向かってたはずじゃ…

 

黒猫

よく聞いてね。あなたはこの橋を向こうの雲まで振り向かずに渡り切らないといけないの。もし途中で振り向いたら橋は消えて、二度と目が覚めないからね。

 

C

橋が消えるって、ここ雲の上…落ちたら死んじゃうじゃん…

 

黒猫

まぁ二度と目が覚めないんだからおんなじようなもんでしょ。

 

C

そんな軽く言われても…いつ渡るかは自分で決めていいの?

 

黒猫

まぁ、少しなら。なに?起きたくないの?

 

C

そういうわけじゃないんだけど…ちょっと久しぶりに一人になれそうだから、いろいろ考えたくて。あ、いや、一人と一匹、だけど。

 

黒猫

好きにしたら?でもあんまり長くいると戻れなくなるからね。

 

C

戻るって、どこに?

 

黒猫

これ以上は今は言えない。あなたが橋を渡れたら全部話すよ。

 

C

わかった。

 

~~~~~~~~

 

D

こ…ここは…

 

黒猫

やぁ。お目覚めですか。

 

D

え、ね、猫が…

 

黒猫

夢ですよ、夢。

 

D

あぁ、そうなの…私いつの間に寝たのかしら…。

 

黒猫

この夢は少し特別でして。ほら、橋が見えるでしょう?この橋を振り向かずに渡り切れたら、目が覚めますよ。

 

D

橋って、あの赤い橋?なんだか靄(もや)がかかっていてよく見えないけど。

 

黒猫

そうです。行けばわかりますが、落ちたら底なし。二度と目は覚めません。

 

D

そんな、どういうこと!?これはただの夢でしょ?

 

黒猫

特別な夢、と申し上げたでしょう?これは夢であって現実でもある。しかし起きている人は来ることができない場所。目覚める条件はただ一つ。何があっても絶対に振り向かないこと。わかりやすいでしょう?

 

D

振り向いたら…どうなるの?

 

黒猫

先ほど申し上げた通りです。橋から落ち、二度と目覚めません。

 

D

なんだか化かされている気分だわ。

 

黒猫

まぁ私は猫ですからね。にゃーお。

 

D

ふん。今更かわい子ぶったって遅いわよ。あいつと同じね。

 

黒猫

あいつ、と申しますと?

 

D

あいつよ。幼馴染として仲良しのふりしてるけど、いつも私の大事なものを横取りいていく、あの小賢しい女よ。今度は娘を使って私の息子まで…絶対に許さない。早く起きて息子から遠ざけなくちゃ。

 

黒猫

いいですか、振り返ってはいけませんよ。

 

~~~~~~~~

 

黒猫

どう?考え事は終わった?

 

C

ん?あぁ。君か。そうだね。久しぶりにゆっくりできたよ。

 

黒猫

そろそろ行かないとここも崩れちゃうけど。

 

C

その前に少し聞いてもいいかな?

 

黒猫

どうぞ。ダメって言ったって聞くつもりでしょ。

 

C

まぁね。ここってさ、似たような場所がいくつもあったりする?

 

黒猫

ここはどこかに存在している場所ってわけじゃないから。ただこの橋はひとつしかないよ。

 

C

振り向いちゃダメって、どういうこと?

 

黒猫

抽象的な質問だね。渡り始めればわかるよ。

 

C

君は、ずっとここにひとりでいるの?

 

黒猫

そうだけど、あなたみたいな人がしょっちゅう来るから、別に退屈しないよ。

 

C

そっか。君の暇つぶしになってるなら良かったよ。

 

黒猫

変な人。早く渡れば?

 

C

そうだね。なんだか、君の声が懐かしく感じて…続きは渡り切ったらにしようか。

 

黒猫

そうして。渡り切れればね。

 

C

頑張るよ。それじゃ。

 

~~~~~~~~

 

A

ちょっと、なによこの橋。見た目と違ってかなり揺れるじゃない!これじゃあ振り向かなくても落ちるわよ!

 

B

そうだね。ブレブレで軸が無いお母さんみたいな橋。

 

A

え!?どこ!?あなた、どこにいるの!?

 

B

ここよ、お母さんの後ろ。

 

A

後ろ?あ…待って…お、お母さん振り向けないのよ。ちょっと前へ来て顔を見せなさい!

 

B

無理だよ。だってこの橋、一人分の幅しかないんだよ?お母さんが振り向いてあたしを見ればいいじゃない。

 

A

だ、駄目よ…だって、振り向いたら…

 

B

お母さんはいつもそう。あたしのことなんて見向きもしない。

 

A

何言ってるの!お母さんはあなたに色々としてあげたじゃない!それなのにあなたはいつも反抗ばかりして!

 

B

それはあたしのためじゃなくて自分のためでしょ?あたしはお母さんの奴隷でも操り人形でもないの。

 

A

親に向かってなんてこと言うの!?

 

B

その親は子供に背を向けているけど?よっぽどあたしに顔向けできないようなやましいことがあるのかしら?

 

A

ち、違う…だって振り向いたらもう起きられないって、あの猫が…

 

B

子供じゃなくて得体のしれない猫の言うことを選ぶんだ。

 

A

う…そ、それは…

 

B

だって夢でしょ?振り向いたところで何が起こるっていうの?そんな風に誰かに依存して、何かあっても人のせいにしてすぐヒステリーを起こす。お父さんが早死にしたのも納得ね。

 

A

な、ち、違う!私は…!は、早く渡らなきゃ。渡り切れば、渡り切れば…!

 

B

何言ってるの?あたしはここにいるじゃない。

 

A

や、やめて!ついてこないで!私は、私はただ…!

 

B

ただ、何?本当は全部思い出してるんでしょ?ねぇ、お母さん?

 

A

やめて!!あいつが、あいつが悪いのよ!私からあなたを盗ろうとして!私は悪くない!!

 

B

じゃああたしとずっとここにいればいいじゃない。ここならあたしもお父さんも、ずっとお母さんのそばにいられるもの。

 

A

え…?あの人が…?

 

B

うん。ここにいるよ?あたしの後ろに。顔を見てあげたら?ほら、あたしも後ろ向いてるけど、何も起こらないし。橋も崩れない。お母さんはあの猫にからかわれたのよ。

 

A

で、でも…

 

B

お母さん。ほら、みんなで戻ろ!あ、お父さん!先行かないでよ。お母さん早く!置いてかれちゃうよ!

 

A

ま、待って!え…!あ…嘘!?きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

~~~~~~~~

 

B

結構歩いてるんだけどなぁ…まだ向こう岸に着かない…。

 

C

疲れたの?一緒に休もうよ。

 

B

え!?っと、あっぶなぁい…振り向くところだった…。

 

C

どうしたの?こっち向いてくれないの?

 

B

うん、なんか、ここ渡ってるときは振り向いちゃいけないんだって。橋の入り口で猫に言われなかった?

 

C

猫に?変なこと言うんだね。猫がしゃべるわけないじゃないか。寝ぼけてたんじゃないの?

 

B

う、うん…そうかも…でもなんか怖いから、とにかく早く渡っちゃうことにするよ。

 

C

そっか…ねぇ、もしかして僕のこと嫌い?

 

B

そ、そんなわけ…ないじゃん。

 

C

なんでちょっと間が空いたの?あ、もしかして照れてる?

 

B

うぅうるさいな!大体、いつも間が空くのはそっちじゃん!

 

C

あ、そうだっけ。ここはほら、僕らだけだからさ、気兼ねせずに話せるからつい。

 

B

そっか。いつも周りに友達とかいたもんね。

 

C

うん。ほんとは僕だって君と二人きりになりたかったんだけど…あいつら、からかいに来るんだよ。ほんと迷惑な奴らだよな。

 

B

え、う、うん…。

 

C

僕は君と一緒にいたいのにさ。ほんと邪魔だよ。

 

B

そう、だね…。

 

C

ねぇ、このまま二人でこっちに逃げちゃうってどう?そしたらずっと二人きりでいられるし。君のお母さんに睨まれなくていいし。

 

B

…。

 

C

どうしたの?

 

B

いや…なんかいつもと違うなって。

 

C

そう?これが僕の本音だよ。僕はあいつらなんかより君との時間の方が大事だから。

 

B

え?………か、彼は…彼はそんなこと言わない…あなた誰!?彼は友達を誰よりも大事にしてた!あたしはそんなところが大好きなの!あなたは彼じゃない!消えて!ついてこないで!!

 

C

ちょ、どうしたのさいきなり!待って!置いて行かないでよ。気に障ることを言ったんなら謝るから。もう、僕は君と離れたくないんだ!

 

B

うるさい!ついてくるな!!…はぁ、はぁ…もう少し、もう少しで向こう岸に…!

 

C

愛してるんだ!!!

 

B

へ…?

 

C

愛してるよ。君を世界で一番、愛してる。

 

~~~~~~~~

 

D

ぐらぐら揺れて…おっと…気味の悪い橋ね…渡る前は綺麗な赤に見えた気がしたけど…。

 

A

まるであなたのようね。

 

D

は!?

 

A

あなたみたいに、いいのは外面だけねって言ってるのよ。

 

D

…あなたには言われたくないわね。かわいこぶってチヤホヤされて。そのくせ中身は強欲。

 

A

なんですって?

 

D

私がずっと好きだったあの人を横から奪っておいて、不倫して、私の大事なあの人を苦しめた。あなたのことは許さない!

 

A

なんのことかわからないわね。だいいち、奪うも何もあの人から私に告白してきたのよ?あんまりしつこいから渋々OKしてあげただけだし、外に恋人作るくらいでギャーギャー言わないでほしかったわ。しかもあっけなく心労だかなんだかで死んじゃっていい迷惑。それに、あなただって旦那がいるじゃない。旦那がいるのにあの人に固執するなんて。あなたも十分最低だわ。

 

D

あんたみたいなクズと一緒にしないで!!あの人の優しさにつけ込むあんたを見張るためにずっと仲良しのふりしてきたけどもう限界。私の大事な息子には絶対手出しさせない。あんたに似た頭の悪い娘なんかに!

 

A

はいはい。あんたのそういう被害妄想ホントにうんざりだわ。娘と私は別人だし、本人達が誰を好きになろうが勝手じゃない。娘は私に似て美人だし、きっと幸せよ~?

 

D

あの人は…こんなクズの為に…こんな…

 

A

あら?今度は泣いてるの?怒ったり泣いたり忙しい人ね~。そういうところが、めんどくさいって彼、言ってたわよ?

 

D

なんですって!?な!?きゃぁぁぁぁぁぁ…!

 

~~~~~~~~

 

C

…そろそろ渡り切っちゃうけど…特に何もなく来ちゃったな。あんなこと言うから何か仕掛けでもあるのかと思ったけど。

 

C’(Cと同じ人)

ねぇ。

 

C

え!?

 

C'

少し話をしようよ。

 

C

…君は誰だ?

 

C'

ひどいな。僕は君だよ。同じ声じゃないか。見た目も君と同じ。嘘だと思うなら振り返ってごらんよ。

 

C

…いや、遠慮しとくよ。ところで、何か用?

 

C'

あ~あ、またそうやってクールぶっちゃってさ。ホントは色々言いたいことがあるくせに。

 

C

…。

 

C’

黙ってたって僕にはわかるんだよ。あの子のこともお母さんのことも、友達のことも、全部めんどくさいと思ってる。ガヤガヤとひっついてきてうるさいし、頭の悪い会話ばかりしてうんざりだろ?そんなの当たり前さ。だってみんな、僕のことを見てるわけじゃないんだから。みんな自分に都合のいいフィルターを通してしか他人を見ない。そうやって勝手に期待をかけて、こっちがそれに応えられないと勝手に失望する。頭悪すぎるよ。そんなところに帰るのが嫌で、ここを渡るかどうか悩んだくせに。

 

C

…そうだね。そう思ってた時もあったよ。正直、橋を渡らなければいろんなことに悩まなくてよくなるのかもとも思った。でも…君が本当に僕自身なら、橋を渡った理由もわかるよね。

 

C'

わからないね。君のやっていることは本心じゃない。誰かが作った「常識」やら「普通」やらを盾にして本音から逃げてるだけだ。

 

C

そうか…そうかもしれない。それでも、やっぱり帰ろうと決めたのは僕自身だ。それを揺さぶろうとするってことは、君は僕が作り出した、いや、この橋が作り出した幻だからだ。…本音のことは、後でゆっくり考えるよ。教えてくれて有り難う。それじゃ。

 

~~~~~~~~

 

B

あ、愛してるって、あたしを?

 

C

僕と君以外には、他に誰も居ないけど?

 

B

そうだけど…ほんとに?

 

C

さっきまで偽物だ!とか言ってたのに急にどうしたのさ。

 

B

いや…あたし、彼から愛してるって言われたくて色々頑張ってきたの。彼の恋人になりたくて、たくさん努力してきた。お母さんはあたしに見向きもしてくれないし、彼から愛を貰えれば、心が満たされると思って…お母さんも、もしかしたらあたしに興味を持ってくれるかもしれないって…でも彼のお母さんには冷たくされるし、彼も何考えてるかわからないし、友達との付き合いも減らしちゃったから相談もできないし…あたし、ずっと苦しくて…

 

C

大丈夫。これからはずっとそばにいるよ。さぁ、こっちにおいで。

 

B

……でも!気づいちゃったの!あなたに愛してるって言われて、あたし気づいちゃったのよ…あたし、本当は彼のことを愛してるんじゃなくて、彼から愛されてる自分を感じたかっただけなんだって!みんなに好かれてる彼の一番になれば、あたしは特別な人間になれるんだって…そういう、自分勝手な気持ちで彼にまとわりついてたんだって…そんな人間のこと、誰も気にかけてくれるはず無いのに…みんな周りのせいにして…今のあなたがしていることと同じだよ。あなた…もしかしてあたしなの?

 

C

……よくわかったね。正確にはちょっと違うけど。でもちゃんと考えられる頭あるんじゃん。普段はバカみたいなのに。

 

B

うわ、一気にあたしみたいな口調になった。

 

C

ばれちゃったし、僕の負け。さ、このまま渡りきりな。もう少しだから。

 

B

…うん。

 

~~~~~~~~

 

黒猫

おかえり。渡りきれるとは思ってなかった。さ、このもやの中を通ったら目が覚めるよ。君たちの世界に戻るんだ。そして、現実としっかり向き合って。また魂が惑わされないように、今度は自分の足で人生を歩き出すんだよ?いってらっしゃい。

 

~~~~~~~~

 

B

体の調子、どう?

 

C

うん、もうだいぶいいよ。まだ上手く歩けないけど。もうあれから1年が経つだなんて、実感が湧かないな。

 

B

ごめんなさい。あたしのお母さんが、あなたのお母さんに睡眠薬を飲ませてたなんて…

 

C

君が謝ることじゃないよ。それに君も被害者じゃないか。君は片腕をなくしたんだ…僕はまだマシさ。

 

B

…親戚の人から聞いたの。お母さん、あなたのお母さんのことを酷く嫌ってて、あなたにあたしを盗られるのが気に入らないって言ってたって。だからって、運転する人に睡眠薬入りのお茶を渡すなんて…!

 

C

きっとうとうとさせて、軽い事故を起こすつもりだったんだよ。そんなに量は検出されなかったって言ってたし。ただ、うちの母親には効き過ぎてしまった。…母さんの部屋を整理してたらさ、日記を見つけて…読んだら君のお母さんと君への恨み言でいっぱいだった。旅行の前日のページには、ホテルの近くを色々調べて、君を事故死に見せかけて殺せる方法を見つけたみたいなことも書いてあった。…多分、それを調べてるうちに寝不足になってたんだ…。僕の方こそ、ごめん。父さんもかなりショックを受けてたよ。

 

B

…あたしたち、女の憎悪劇に巻き込まれたってことね…。命は助かったけど。

 

C

母さん達は、橋を渡り切る前に振り向いちゃったんだろうな。

 

B

あの声に逆らうのは大変だったもん。

 

C

ねぇ。こんなことがあって、こんなことを言うのも正気じゃないと思うんだけど、これからの人生、僕が君のなくした腕になっちゃ駄目かな?

 

B

それじゃあ、あたしがあなたの足になってあげる。

 

C

ははは。僕たちは2人で1人ってことか。いいね、悪くない。できればあの猫にも挨拶に行きたいけど…。

 

B

もうあそこに行くのは嫌だなぁ。

 

黒猫

にゃ~

 

C・B

え!?


 

時間は目安です。

 

恋に焦がれ、声に心を惑わされ…いつの時代も己を惑わすのは自分自身。

その正体に飲み込まれないよう、しっかりと自分の足で歩んで行ってくださいませ。

 

もしよろしければお話の感想や、使用後の感想なども下のコメント欄に投げてくださると嬉しいです!