ルール
・一人称、語尾変、性別変OK
・使用の際には下にコメントを残していただき、使用先で
「(台本のタイトル)」 、「作者まつかほ」
を明記してください。
このホームページのURLも併記してくださると嬉しいです。
・コメント欄に使用場所のリンク等を貼ってくださると僕も聞きに行けるので助かります!
・BGMはご自由につけていただいて構いませんが、BGM作者様がいる場合には許可を取ってからつけてください。
・読めない漢字はご自分でお調べください。
・本文のコピペは禁止しております。どうしても必要な場合はお問い合わせください。
・詳しくは台本使用に関する注意事項をお読みください。
配役
男:
女:
?(性別不問):
以下本文
男「もう…どのくらいの時間、この川べりに居るだろう。どのくらいの時間、君はこの川べりを歩いたり、立ち止まったり、遠くを見たり…。俺はなんて声をかけるのが正解なのか、自信が無くて俯いたままでいる」
女「ねぇ。聞いてる?そっちはどうかな…上手くやれてる?あなた…おっちょこちょいだから…つい世話を焼いちゃって」
男「……。」
女「よく拗ねてたよね。子供扱いするなって。でも、今思うと確かに失礼だったね。あなただってもう大人なのにさ」
男「……。」
女「なんだかもう遠い昔のことみたい。私、毎日ここでこうしててさ。本当は、前を向かなきゃいけないのに。このままじゃ…」
男「…あのさ」
女「あっちによく2人で行った河原があったの、覚えてる?」
男「君はそう言って俯き気味に歩き出した。離れてしまうのが嫌で、でも近づき過ぎたらいけない気がして、微妙な距離を保って後ろを歩く。心なしか、君の肩は震えているように見えた。川からの風が冷たい気がして、思わず上着をかけようと脱ぎかけたけど、きっと君は受け取らない。…受け取れない」
女「私、あなたと出会えて、本当に良かった。もし出会えて無かったら、他人を信じることも、誰かに優しくしたいと思う気持ちも、優しさを向けられる幸せも、知らないままだった。知らない…ままだったんだよ…」
男「君は声を震わせると、その場でうずくまってしまった。俺には、背中をさすることができない」
女「…知らない…ままでいたかった。こんなに辛いなら。あなたが隣に居なくて、会えなくて、凄く辛かった。寂しかった。突然会えなくなって…あなたと連絡を取ることもできなくなった。凄く…凄く憎かった。日常と未来を奪ったあいつも。自分の運命も。でも…あなたを憎むことだけは…できなかった…」
男「……ごめん。ごめんな……」
女「ずっとここで待ってた。あなたに会えるんじゃないかって。…私を迎えに来てくれるんじゃないかって。でも…あなたは一度も来てくれなかった…」
男「……。」
女「…ううん。本当はね、わかってるの。わたしがあなたのところに行けばいいんだって。行ってやろうって、何度も思った」
男「俺だって、本当は君のところに……」
女「でも……できなかったよ…。それはやっちゃいけないこと。そんなことをしても…あなたは喜んでくれないから…。優しいあなたはきっと、自分を責めてしまうから…。それに、最近はなんだかあなたがそばにいるような気がして、ホッとしたというか…。だから、もう前を向こうって。自分の居るべき場所に行こうって。……だから…これが最後」
男「え…?」
女「私は、自分が居るべき場所に、還るね」
男「そう言うと君の身体はゆっくりとモヤに包まれ、輪郭が消え、小さな光の塊となって昇って行った。川がいつもよりも眩しく光った気がして、俺は顔を覆った」
?「…ちょうど今日が、49日でしたね。彼女さんが無事に昇って行けて本当に良かった。ご協力有難うございます。毎日こちらに通われて、あなたの想いは遂げられましたか?」
男「……はい……。彼女を見送ることができて、本当に良かった……。有難う、ございますっ」
?「いえいえ。私はこれが仕事ですから。彼女にはあなたの姿は見えない、声も届かない。でも、心の繋がった者同士ならば、存在を感じて安心するくらいはできるかもしれない。未練があってあちらへ逝けずに彷徨っている魂のそばに、そういう繋がりがありそうな人間を連れてくる。魂自身が自分の意思で上へ昇れるようにアシストする」
男「…俺と彼女は、ちゃんと繋がっていたんですね……それがわかっただけでも……俺は……」
?「彼女さんのことは、本当にお気の毒です。これから先、思い出の中で生きる彼女さんを、どうぞ大切にしてやってください。そしてあなたは、あなたの人生を大切にしてください」
男「はい。彼女の分まで、前を向いて歩こうと思います」
?「……それでは、そろそろ」
男「そうですね。この扉をくぐるのも、今日で最後……。もう彼女には会えない。」
?「ここは彼女の未練が作り出した幻の場所。あの世とかの世の狭間の場所。彼女が居なくなった今、ここももうじき無くなります」
男「最後にひとつだけいいですか?」
?「なんでしょう?」
男「あなたは、彼女のお知り合いか何かですか?なんだか彼女を見る目が他人とは思えなくて……」
?「……私は……あの子の成長をそばで見てやれなかった、愚か者ですよ」
自分が彷徨った時、「会いたい」と心に浮かぶ人は居ますか?
迷った時に助けてもらえるように、生きてるうちは誠実でありたいなと思います。
彼岸花は「悲しき思い出」という花言葉だけでなく、「情熱」という花言葉もあるそうですよ。