狂気系朗読台本「狂神の憂い」(5分~)


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内なる狂気というのは誰しもが持っている感情のひとつだと思います。
狂気台本によくある「狂い笑い」は、ファンタジー色が強すぎる故に、誰が演じても同じような作品になるなと感じて、
より「リアル」な内なる狂気を台本にしてみました。
そう、この台本は、腕試し。
狂気を悟られないようにも
狂気なんて何処にあるのかと思わせるようにも
思いっきり狂気を出すことも
リアルを追求することも
演じるあなたの思いのまま。
きっと他の誰とも違う「狂気」に仕上がると思いますよ。
是非、挑戦してみてくださいーー

この者が本物の神かどうかは、誰にもわからない…

以下、台本


おや?君は何をそんなに泣いているんだい?
つらいことでもあったのかな?

…え?…あぁ、またそれか。
傲慢な人間のお決まりのセリフ。
どうして私だけがこんな目に遭うの
どうして俺がこんな目に

そういう傲慢で他力本願な人間はフタコト目にはこう言うんだ。
「神様は不公平だ」ってね。

どこが不公平なんだい?
どこに不平等があるんだい?
神は平等だよ。
どれだけ徳を積んだ者も
どんな悪行を重ねた者も
ただ本能に従い生きた者も
命はひとつだ。
2つは無いし永遠には生きない。
命を奪って自分の物にすることもできない。

他人の命を貰って自分が生きながらえる世界だったら
もっと多くの人たちが苦しんで、不公平で、不平等な、まさに混沌とした歪な世界になっていただろうね。

それなのに人間は何かあれば神のせいにして悲劇を演じる。
とんだ三文オペラだ。

考えればわかるだろ?
君が今感じている不公平感は誰が作ったものだ?

金貨を作り貧困を生んだのも
集団を作り差別を生んだのも
規律を作り罰則を生んだのも
全部人間が作ったものじゃないか。
神が作ったのは命だけだ。
それをどんな生き物にもひとつずつ与えているんだ。
とてもシンプルで公平でわかりやすい答えだろ?

それなのに他力本願な人間たちは命を粗末にしてこう言う。
「神様なんていない」
あぁ…実に傲慢で愚かで浅はかな言葉だ…。

科学という力を使って命の時間を限りなく無限に延ばそうと躍起になっている人間までいる。
それこそ不平等の極みじゃないか。

金が有る者、力の有る者、コネの在る者はどんな悪人でも善人でも延命ができるのに
金の無い者、貧弱な者、血縁すら居ない者は死を受け入れざるを得ない。
どうだい?さらなる不公平な世界が始まりそうだろ?
そしてより残酷な奪い合いが始まる、それが人間なんだよ。

…なんだって?僕が狂ってる?おかしい?
ふ、ふふ…愚かな君には僕がそう見えるのか。
なんとも可笑しい話だね。
狂ってる世界で、自分の足で生きてもいない狂った人間に狂人扱いをされるとは。

君は自分で決断することも、その手でもがくこともその足で逃げることもしないで、
ただ誰かのせいにして「可哀想」と言ってもらいたかっただけだろ?
命はひとつという大事なことも忘れて、自ら沈んだ沼の底でただ溺れたフリをしているだけなんだよ。
ご丁寧に酸素ボンベまでしょって。

…あぁ…君が言いたいことは手に取るようにわかるよ。
「強い人ばかりじゃない」って言いたいんだろう?

これだから他力本願な人間は嫌いなんだ。
話を自分で考えることもせず、ただ「聞いているだけ」
与えられるのを待ってるだけの雛鳥のように思考回路が短絡だ。

いいかい?
命はただ「生きる」ことだけをまっとうしているんだよ。
そこに強いも弱いも無い。
強いだの弱いだの、その概念を生み出したのは人間自身なのさ。

心と命は別物だ。
心が命を奪うことは有っても
命が心を奪うことは無い。
それは十分条件であり、必要条件ではないということなんだよ。

心が弱い人間ほど、外に理由を求めたがる。
誰かに縋らないと生きていけないと思い込んでいる。
しかし本当に今在る不幸は他人のせいなのか?

よく考えるんだ。
君が今、そこで不幸に浸っているのは
抜け出すことも変わることももがくこともせずにしている「それ」は
誰かに強制されたものなのか?
誰かのせいにして悲劇に浸ることを選んでいるのは君自身じゃないのか?
ましてや神が君だけを苦しめてるなんて本気で思うのか?

そのままでいることはとても楽だからねぇ。
気づいてもらえない、わかってもらえないと他力本願に泣くのも簡単だ。
傲慢な人間の責任転嫁でしかないという事実と向き合わなくて済むし、考えることもしなくて済む。
まるで子供に遊んでもらえないと動くことすらできないオモチャのようにね。

だから僕は、要らないならその命返してよっていつも言うんだ。

でも、その途端に拒絶し始めるんだよ。
怖い。狂ってる。死にたくない。
散々粗末にした癖に
見苦しく生きることに執着する。
粗末にして見せてるだけの人間の多さに反吐が出るよ。

最近は、そういう人間から強引に命を取り返すのが楽しくなってきちゃってね。
本物の絶望を最期に味わう人間の顔って、面白いよね。
自分が放った言葉の責任の重さを
身をもって知れるんだ。
感謝してほしいくらいだよ。

…ねぇ、君言ったよね。
こんなにみじめな命なんて要らないって。
そんなにみじめなら、僕に君の命を…返して?
一度言ったことは取り消せないよ?
ましてや僕に言ったんだ。
平等に命を与えている僕にね。

…くく…そう、その顔だよ。
絶望に染まって、本当は生きたいと思っていたことに気づく瞬間。
でも、もう遅いよ。
さぁ…一瞬で僕が終わらせてあげる。
こんな「不公平」な世界を、ね。

 

時間は目安です。