朗読「ポラリスになった君」(5分以内)


ルール

・一人称、語尾変OK

・使用の際には下にコメントを残していただき、使用先で

「(台本のタイトル)」 

「作者:まつかほ」

を明記してください。

このホームページのURLも併記してくださると嬉しいです。

・下のコメント欄に使用場所のリンク等を貼ってくださると僕も聞きに行けるので助かります!

・BGMはご自由につけていただいて構いませんが、BGM作者様がいる場合には許可を取ってからつけてください。

・読めない漢字はご自分でお調べください。

 


月の雫が落ちた

それを見た星は初めて、月がえぐれた三日月になっていることに気がついた

見えていたのは、自分が当たり前だと思い込んでいた満月の幻だったのだ

えぐれた三日月からは銀色の水が溢れ(あふれ)、滴る血のように美しく月を染め上げた

 

もっと入る

まだ入る

もう少しだけ

 

「いいよ。大丈夫だから」

 

月は淡く丸い光の中でそう言い続けた

星はそれが当たり前だと思っていたのだ

当たり前に自分にある権利だとさえ思っていた

 

その結果、今その重みに耐えきれずに、宇宙(そら)から落ちて地表へと月が向かっている

少し触れたら折れてしまいそうな程に細くなった三日月が地面へ落ちたら、あっという間に粉々の砂になってしまうだろう

しかし星には何もできない

気づいても遅かった

 

月は音も無く砂になっていく

地面に触れた瞬間から、まるで元々そうだったかのように砂に変わっていく

最後の一欠片が崩れる瞬間、月が寂しそうに笑って言った

「ごめんね」

 

星は泣いた

自分のしたこと、自分がしなかったことが、恐ろしくて、苦しくて、大声で泣くことしかできなかった

零した涙が星の周りを飛び、星の光は強くなっていく

 

「大丈夫。砂になった君が宇宙(そら)がどこかわかるようにずっとここで照らし続けるから。もし元に戻れたら登ってきて。今度は君と同じものを見ながら過ごしたいんだ」

 

月は何も言わなかったが、星は構わずその場に留まり続けた

動かずにその場に留まることが星にとってどれほどの苦痛かと

それが月の役割だったのだから気にするなと

周りの星は諭して廻る(まわる)

 

痛みなど無い

代わりに痛みを受け続けてくれていた月に比べれば、どうってことない

大丈夫、周りがなんと言おうと、君をずっと待ってる

ここで、待ってるから

これが、君を独りにさせた自分にできる唯一のことだから


時間は目安です。


月と星にあなたは誰を重ねましたか

それは大事な人ですか

知り合いでしたか

それともご自分でしたか

共感するものがあると嬉しいです

ずっと在るとは限らない幻(日常)に、ここで出会えたあなたに、感謝の言葉を贈ります