朗読「輪廻案内人」(3分強)

ルール

・一人称、語尾変OK

・使用の際には下にコメントを残していただき、使用先で

「(台本のタイトル)」 

「まつかほの台本」(もしくは「作者まつかほ」)を明記してください。

このホームページのURLも併記してくださると嬉しいです。

・コメント欄に使用場所のリンク等を貼ってくださると僕も聞きに行けるので助かります!

・BGMはご自由につけていただいて構いませんが、BGM作者様がいる場合には許可を取ってからつけてください。

・読めない漢字はご自分でお調べください。

 ・詳しくは台本使用に関する注意事項をお読みください。


いらっしゃいませ。
なんだかお疲れのようですね。
 
あなたがここに来たということは、あなたが輪廻の歯車を動かしてしまったということ。
それすなわち私(わたくし)の出番。
 
ようこそ、お客様。
ここにはおもてなしのティーセット、なんてお洒落なものはありませんが、
「懐心時計(かいしんどけい)」の案内人であるこの私(わたくし)が、最後の時をご案内いたしましょう。
 
「懐心時計」とは、あなたが持っているその「歯車」の集まりのこと。
歯車とはつまり心。感情の集まりのことを指します。その集まりが、「今のあなた」の命です。
 
おや、手に持っていることに気が付いていなかったんですか?
無理もありませんね。ここに来る方は、みな意識が混濁としていることが多いですから。
アンティーク調の素晴らしい作りでしょう。
 
それが動き出し、ちょうど針が1回転すると、あなたは…正確にはあなたの魂は、今ある身体を捨て、輪廻の渦に戻ることとなっています。
今のあなたの命が消滅する、と言った方がわかりやすいかもしれませんね。
 
あなたは覚えていないでしょうが、何度もここに来ているんですよ。
 
しかし、そんなに黒ずんだ懐心時計は私(わたくし)も久しぶりに見ましたよ。実に数十年いや、数百年ぶりかもしれません。
随分、心を傷つけて、この最後の歯車を回してしまったのですね…。
いやいや、根掘り葉掘り聞くのは私(わたくし)の趣味ではございません。
ただ、おつらかったのだなと、想像するだけに努めましょう。
 
さて、時計の針も随分と進んで参りました。
あなたが迷わないように、不要なものを洗いざらい吐き出していってしまいましょう。
 
たとえば、月明かりのベールに星降る夜、と人は言いますが、
あなたに降っているものは、なんですか?
 
その命に降り注いだ、
雨、災難、不幸、苦しみ、妬み、涙…。
暗闇のベールに包まれたようなあなたには、この世はどんな風に見えていたのでしょう?
 
もし、あなたを覆うベールを取り除けるなら
取り除きたいと思いますか?
 
今のあなたは靄(もや)に包まれたように輪郭が無い。
それでは渦に入る前に迷って消えてしまいます。
 
つまり、二度と生まれることはない、ということです。
 
はぁ…(溜息)
人は変わりたいと願いながら、
変わらないでほしいと妥協します。
 
人に変わってほしいと頼みながら、そのままでいてと笑います。
 
無い物をねだり、有る物をすてる。
 
輪廻は巡る、巡るは縁(えにし)。
 
あなたの「現在(いま)」は
何か縁(えにし)あってのことなのです。
 
さぁ、あなたはもう一度、生きたいと望みますか?
輪廻はほら、あなたの手の中に…。

時間は目安です。

 

命の最期の瞬間、あなたの迷った魂に声をかけてくれる存在がいたとしたら、あなたはどんな姿の「それ」を想像しますか?

ぜひ、迷える魂が選択できるように導いてあげてください。