ルール
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「(台本のタイトル)」 、「作者まつかほ」
を明記してください。
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・詳しくは台本使用に関する注意事項をお読みください。
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星座にまつわる神話を触れやすいひとつのシリーズに改編してお送りする、「星になった物語シリーズ」2章。
実際の神話とは違う部分もありますが、親しみやすくなるように改変してあります。ひとつの夢物語としてお楽しみください。
2章はカラス座にまつわるカラスの早とちりのお話から始まりました。
2話では悲劇の出生からへびつかい座として医学のシンボルとなったアスクレピオスの幼少期の様子を見てみることにしましょう。
星座のリクエストや感想など、ぜひコメント欄で教えてくださいね。
N:ナレーター。男女不問。
アスクレピオス:少年~青年男性。一人で青年まで担当してもOK。青年の声が出せるなら女性でもOK。
ゼウス:男性。
ケイローン:男性。
ディオニュソス:男性。青年の声が出せるなら女性でもOK。
アリアドネ:女性。
*演じる際、それぞれの役は兼役可ですが、主要キャラは分けるとより楽しめるかと思います。
以下本文
N
「星になった物語、2章第2話では悲劇の出生となったゼウスとコロニスの子供、アスクレピオスのお話をお届けします。1話でケンタウルス族の賢者ケイローンの元に預けられたアスクレピオス。どうやらある才に長けているようで…」
アスクレピオス(少年)
「ケイローン様!お父様はまだですか?」
ケイローン
「アスクレピオスよ、そうせっついても物事は思い通りにはならんぞ。はやる気を抑え平常心でいないと、思わぬところで足をすくわれるからな」
アスクレピオス
「でも…」
ケイローン
「…ゼウス様はもうじきにいらっしゃる。たくさん話をできるようゼウス様がご滞在中の勉学は休みとしよう」
アスクレピオス
「やったぁぁぁぁ!ケイローン様!大好き!!」
ケイローン
「こらこらやめないか。まったく、お前ももう10になるというのに、いつまでも子供らしさが抜けんのぉ…」
ゼウス
「ケイローンよ、もしやディオニュソスと比べているのではあるまいな?」
ケイローン
「ゼ、ゼウス様!いつからそこに?」
アスクレピオス
「お父様!」
ゼウス
「アスクレピオス、元気そうで何より。勉学にはしっかり励んでいるか?」
アスクレピオス
「勿論です!お父様、ディオニュソスって誰ですか?」
ケイローン
「アスクレピオス、続きは座ってお話ししなさい。ゼウス様、どうぞ中へ」
アスクレピオス
「お父様!ディオニュソスって誰ですか!!」
ゼウス
「そんなにくっついたら歩きにくいではないか。ケイローン、話してやってないのか?」
ケイローン
「はい。アスクレピオスはゼウス様に似て負けず嫌いですので、無理をして体を壊してもと思いましてね」
ゼウス
「ははは!確かに、こいつはディオニュソスと違って気の強いところがあるからな!面白い、ディオニュソスに今度会わせよう。きっとお前に良い刺激になるぞ」
アスクレピオス
「ディオニュソスという人もお父様の子供なの?」
ゼウス
「そうだ。頭の良い奴で先見の明もある。今はワインが美味い島の統治を任せていて、最近ようやっと妻を持って落ち着いたところでな」
ケイローン
「なんでもとても聡明な方とか」
ゼウス
「あぁ、肝の据わった女でな。どこかのんびりとしているあれにはちょうど良い娘だ」
アスクレピオス
「…そうなんだ」
ゼウス
「どうしたアスクレピオス。急に静かになって」
ケイローン
「やきもちですよ、ゼウス様。アスクレピオスはゼウス様の子の中で一番だと言ってもらいたいのです」
アスクレピオス
「ちょ!ケイローン様!言わない約束だったのに!」
ゼウス
「はははははは!これは愉快だ!お前はこのケンタウルス族の賢者ケイローンを師として、あらゆることを学んでいる私の自慢の息子だ。きっと今に誰にもなし得なかった偉業を達成するだろう。楽しみにしているよ。私はお前を一番に気にかけているのだから」
アスクレピオス
「はい!!もっともっと勉学と鍛錬を積んで、お父様の一番の子になってみせます!」
ケイローン
「やれやれ、こうなるからディオニュソス様のことは控えていたのです…。ゼウス様も甘いんですから」
ゼウス
「仕方なかろう。事故とは言え、この子から母親を奪ってしまったのだから」
アスクレピオス
「でも僕は寂しくないですよ!ケイローン様からたくさんのことを教えてもらえるし、ニキのところのエウラリアとも遊べるし、ケンタウルスのみんなも優しいし、お父様も会いに来てくれるし!」
ゼウス
「そうかそうか。くれぐれも体を壊さないでおくれよ」
ケイローン
「心配ご無用ですよ。私もついていますし、それにアスクレピオス自身がとても優秀で、特に医学の知識の飲み込みは10歳にして、もう私を追い越さんばかりのものです。この子は天才ですよ。その代わり武術の方はからっきしですが…」
ゼウス
「そうなのか!?それはますます楽しみだ!よし!気が変わった!今からディオニュソスのところに行くぞ!」
アスクレピオス・ケイローン
「え!?」
ゼウス
「いやな、さっき話したディオニュソスの妻の体調がここのところ優れないようなんだ。島の医者に診せてもとんとわからず…。その相談もしたくて今日は来たんだ」
ケイローン
「それは大変!すぐに支度しますのでお待ちください!アスクレピオス!お前もすぐに支度なさい!」
アスクレピオス
「あ、は、はい!」
N
「こうして急遽ディオニュソスの元へ行くことになったアスクレピオス。ゼウスにとっての一番になりたいアスクレピオスは、ディオニュソスにライバル心を抱きつつ島へ急ぎます。これが彼にとって大きな転機となるのも知らずに…。さぁ、ディオニュソスの島が見えてきました。アリアドネの身に一体何があったのでしょうか」
ゼウス
「ディオニュソス!ディオニュソス!ケイローンを連れてきたぞ!」
ディオニュソス
「お父様!予定より随分早く来てくださったんですね!」
ゼウス
「あぁ。して、アリアドネの様子は?」
ディオニュソス
「それが、日に日に動けなくなっておりまして…今日はまだ水しか口にできておりません。おや、その子はもしかして?」
ゼウス
「うむ。ケイローンのところに預けているアスクレピオスだ。まだ子供だが、医術の心得があるらしい。お前にも会わせようと思っていたので連れてきた」
ディオニュソス
「なるほど。まだ子供なのに君はとても賢いんだね。良い医者が2人も来てくれて助かります。さぁ、アリアドネは奥の部屋に」
アスクレピオス
「え、あ、はい…」
ケイローン
「さぁ、参りましょう」
~4秒くらい間を空ける~
ディオニュソス
「アリアドネ、お医者さんが来たよ」
アリアドネ
「あぁ…私のためにはるばるお越しくださって…」
ケイローン
「寝ているままで大丈夫。少し体を診ます。ディオニュソス様、宜しいですか?」
ディオニュソス
「勿論、よろしく頼むよ」
ケイローン
「はい。アスクレピオス、お前も来て一緒に診なさい。気づいたことがあればすぐに教えるんだぞ」
アスクレピオス
「はい!」
ケイローン
「…うーん…確かに病んでいるところは何も無さそうだ…失礼ですが、ご懐妊の可能性は…?」
ディオニュソス
「僕もそう思ったんだけど、この前月役(つきやく)は来たみたいなんだ。でもその後から具合を悪くしてしまって…」
ゼウス
「…どうだアスクレピオス。気になるところはあるか?」
アスクレピオス
「…ひとつ聞いても良いですか?」
ディオニュソス
「なんだい?」
アスクレピオス
「月役の前に、アリアドネ様は転んだりしませんでしたか?何か腹部に強い衝撃を与えたとか…」
アリアドネ
「い、一度だけ…立ちくらみがして転んだことがあります。その時に腰を少し打ってしまって…」
ディオニュソス
「え!?なんで言わなかったの!?すぐに医者に診せたのに!」
アリアドネ
「痛みもすぐに引きましたし、立ちくらみもすぐに治まったので…そのあと月役が来ました」
ケイローン
「なるほど。アスクレピオス、でかしたぞ。ディオニュソス様、すぐにヨモギを大量に用意してください!それから薬研(やげん)も!」
ディオニュソス
「え、あ、わかった!!すぐに用意する!」
ゼウス
「一体何だと言うんだね」
ケイローン
「説明は後で致します。まずは薬が先です。アスクレピオス、他の必要なものは心得ているな?」
アスクレピオス
「勿論です!すぐに用意します!」
~4秒くらい間を空ける~
ケイローン
「アリアドネ様のご様子はいかがですかな?」
ディオニュソス
「うん、気持ちよさそうに眠っていたよ。薬が効いたのかな?」
ケイローン
「ヨモギには鎮静作用もあります。気持ちを鎮めてよく眠れるようになりますから」
ディオニュソス
「じゃあアリアドネはただの寝不足だったの?それでめまいを?」
ケイローン
「いや…大変申し上げにくいのですが…アリアドネ様は妊娠していたのだと思われます」
ディオニュソス
「なんだって!?しかし島の医者はそんなことは一言も…」
ケイローン
「はい、妊娠初期の頃というのはなかなか判断が難しく、医者でも見逃すことがあります。特にアリアドネ様はお強い女性。体の変化や不調をあまり人には仰らないでしょうから…。もしかしたらご本人も気づいておられなかったのかもしれません」
ディオニュソス
「じゃあもしかして…」
ケイローン
「誠に残念ながら…」
ディオニュソス
「そんな…」
ケイローン
「月役と思っておられたのは流れてしまったお子様だと思われます。しかし全てを出し切ることができず、お身体に障っていたのでしょう。ヨモギを濃縮したものと他の薬草を混ぜた薬を1週間ばかりお飲みになれば、きっとご快復に向かいます」
ディオニュソス
「…きっとアリアドネは自分を責めるだろうね…」
ケイローン
「しかし隠されるのも傷つく方かと」
ディオニュソス
「そうだね…どうしたらいいんだ…こういう時、男ってのは無力だね…」
ケイローン
「だからこそ、アスクレピオスがおります」
ディオニュソス
「そういえば彼はなんですぐにわかったんだろう。君でも気づけなかったのに」
ケイローン
「あの子には亡くなった母の代わりに多くの女性がその血と時間をかけ、自分の子と分け隔て無く愛情を注いでくれました。だからこそ彼にしかわからない些細なことがあるのやもしれません。そして子供だからこそできることも。今は2人にして差し上げましょう」
~4秒くらい間を空ける~
アリアドネ
「…そこに居るのは…アスクレピオス?」
アスクレピオス
「あ!お目覚めになりました?ご気分はいかがですか?」
アリアドネ
「今は体が軽くなった気がするわ…ねぇ、さっきの薬のことだけど」
アスクレピオス
「ヨモギ薬(ぐすり)のことですか?」
アリアドネ
「えぇ。ヨモギって確か…」
アスクレピオス
「…はい。もうお気づきとは思いますが、アリアドネ様がお身体を壊したのは、お腹に居たお子様が流れ、その血がお身体に留まり悪くなってしまったからだと考えました。浮腫と胸の張り、そして腰付近に最近できたアザの跡がありましたので…その…以前僕を育ててくれてた女性が同じようになったのを見たことがあって…それで…」
アリアドネ
「いいのよ、有難う。気を遣ってくれなくて大丈夫。そう…ディオニュソス様との子が…流れてしまったのね……うっ…私が転びさえしなければ…私がきちんと体調を管理していれば…こんなことには…うぅっ…産んであげたかった…死なせてしまうなんて…うわぁぁぁぁぁ私のせいで!私のせいでぇぇぇ!!(大声でしばらく泣いてください)」
アスクレピオス
「…アリアドネ様のせいじゃない!!」
アリアドネ
「!?え?」
アスクレピオス
「…確かにお子様は流れてしまいました…でもそれはアリアドネ様が殺したからじゃない!誰のせいでもない!私のせいでって泣かれる子供からしたら『僕のせいでお母様を傷つけてごめんなさい。強くなくてごめんなさい』ってなるんです!あなたのそばにいる人たちはお子様が流れてしまってあなたを責めるような人たちですか!?僕たちはそんな人でなしに見えますか!?僕たちは生きてそばに居るのに無視ですか!?僕たち子供は、お母様には笑っていてほしいんです!!だから…だから…!!」
アリアドネ
「アスクレピオス…」
アスクレピオス
「…うぅっ…すみません、アリアドネ様が悲しいのは当然なのに…僕…」
アリアドネ
「ううん、いいの…あなたにも何かあったのね」
アスクレピオス
「ぐすっ…僕を自分の子と同じように育ててくれた女性の子が流れてしまったことがあって…。僕は本当の母と同じように思ってました。でもそれからその人は僕たちのことが見えないかのように落ち込んでしまって…すごく悲しくて…その人はそのまま身体を壊してしまいました」
アリアドネ
「そうだったの…」
アスクレピオス
「僕、亡くなってすぐならその人の声を聞くことができるみたいなんです。その亡くなってしまった子の声がずっと『ごめんなさい、ごめんなさい。泣かせてしまってごめんなさい』って…どんどん小さくなって…すごくつらくて…」
アリアドネ
「いくつの時?」
アスクレピオス
「5歳の時です。その頃から医術の勉強を始めました。生者と死者の悲しい気持ちを少しでも取り除きたくて…」
アリアドネ
「そう……おいで」
アスクレピオス
「え…?」
アリアドネ
「…あなたのお母様に代わって。そして私の子の代わりに、少しだけこうして抱きしめさせて…。あたたかい。私もあなたも、こうして生きているのですものね…自分を責める前に、亡くなった子をまず弔ってあげなくては。一番悲しいのはきっと、子供達だものね…。ごめんね…待ってるからね…またおいで…今度はぎゅってしてあげるからね…」
(しばらくして2人とも寝息を立て始める)
ディオニュソス
「…泣き声が止んだと思って来てみたら…2人とも顔が涙でびしゃびしゃだ。気持ち良さそうに寝てるね」
ケイローン
「はい。アスクレピオスのこんなに穏やかな寝顔は数年ぶりに見ました」
ゼウス
「しばらくこのままにしてやろう。どれ、私たちは私たちで準備を済ませてしまおうか」
N
「ゼウスとケイローンは亡くなった子の為に小さな墓を作り、ディオニュソスはアリアドネの為に流れてしまった子に名前をつけ、その名を刻印した特製の首飾りを作りました。目を覚ましたアリアドネにその首飾りを渡すと、大粒の涙をこぼして感謝と謝罪をするアリアドネ。しかしアリアドネは自分を責めることはしませんでした。アスクレピオスから聞いた話をディオニュソスに伝え、ディオニュソスはアスクレピオスの一連の功績にとても感謝し、医術の勉強、研究ための資金はいくらでも出すと約束しました。こうしてあっという間にアスクレピオスの話は広まり、成人を迎える頃には知らない者は居ないという程、腕の良い医者に成長します。しかしある禁忌に触れてしまったアスクレピオスにまたしても悲劇が…。この続きは次回に。では、第3話でまたお会いしましょう」
時間は目安です。
*ヨモギには女性に嬉しい様々な効果がありますが、大量に摂取すると子宮収縮を促し流産、早産に繋がります。
また、ヨモギの学名アルテミシアは女神アルテミスが由来となっています。
*薬研とは薬草や木の実などを挽く道具で、薬作りに欠かせないものです。
実際の星座のお話とは異なるストーリーとなっております。
実際には、アスクレピオスの父はゼウスではなく、太陽神アポロンと語られています。
ディオニュソス達とのやり取りも創作です。
実際の神話が気になった方は是非調べて、夜空を見上げてみてくださいね。
1章第1話からお読みになる方はこちらから
星になった物語シリーズ(一覧)