掛け合い「星になった物語」 1章第1話(10分前後)複数人用


ルール

・一人称、語尾変OK

・使用の際には下にコメントを残していただき、使用先で

「(台本のタイトル)」 

「まつかほの台本」(もしくは「作者まつかほ」)を明記してください。

このホームページのURLも併記してくださると嬉しいです。

・コメント欄に使用場所のリンク等を貼ってくださると僕も聞きに行けるので助かります!

・BGMはご自由につけていただいて構いませんが、BGM作者様がいる場合には許可を取ってからつけてください。

・読めない漢字はご自分でお調べください。

 ・本文のコピペは禁止しております。どうしても必要な場合はお問い合わせください。

・詳しくは台本使用に関する注意事項をお読みください。

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星座にまつわるお話を、皆さんはいくつご存じですか?

あまり話題にならない星座にも、面白いお話がたくさんあります。

そのお話を読みやすい形にして、ひとつのお話にまとめてみました。

シリーズものになります。

もし星座のリクエストがあればコメント欄にて教えてください。

感想もお待ちしております。

 

N:ナレーター。男女不問。兼役可。

船乗り1:男性(女性がやる場合は語尾、一人称変更可)

船乗り2:1に同じ

船乗り3:2に同じ

ディオニュソス:男性(少年、青年の声なら女性も可)

世話役:男女不問。壮年から老年の声。兼役可。

(笛の音もあると臨場感が増します)


N
春の大曲線の先にあるカラス座。
その西隣にあるコップ座は、目立つ星座ではありませんが、とても面白いお話がある星座です。
私たちが想像するコップ、ではなく、神々が使っていた美しい杯(さかずき)、だったと言われています。
その美しい杯を使っていた神…気になりませんか?
それはそれは美しい青年の容姿をして、装飾品もどれも精巧なものだったそうです。
おや?どうやらその装飾品を奪おうとしている人達がいるようですね…。

船乗り1
「おい。本当にやるのか?」

船乗り2
「当たり前だろ。あんなにジャラジャラ飾りを着けてんだ。それにあの杯(さかずき)見ろよ。あんな豪華な代物(しろもん)見たことねぇ。俺らが奪ったところでまた買えるほどのお坊っちゃんだぜ、ありゃあ。」

船乗り1
「しかし、あんなに綺麗な顔立ちの男、俺ぁ見たことないぜ。この島の王様なんじゃねぇか?」

船乗り3
「お前はいつも腰抜け腑抜けだなぁ!王様がこんなところで1人で笛を吹いてるわけねぇだろ!」

船乗り2
「そうだそうだ!ありゃあこっそり家を抜け出して来た悪ガキ坊っちゃんにちげぇねぇ!」

船乗り1
「わ、わかったよ。」

船乗り2
「さぁ早いとこやっちまおうぜ!日が沈む前に済まさねぇと俺らが帰れなくなっちまう!」

 

船乗り3
「さっさと奪って金に変えて、今日は酒飲み放題だぜ!!おら!砂浜に船寄せろ!」

ディオニュソス
「おや?あの船は一体…?」

船乗り3
「よぉ坊っちゃん!こんな日暮れに1人で何してるんだい?」

ディオニュソス
「僕はこの笛を楽しんでいただけだよ。とてもいい音が出るんでね。つい夢中になってしまった。」

船乗り2
「はっ!お坊っちゃんらしいなぁ!」

ディオニュソス
「な!何をするんだ!?」

船乗り3
「大人しく縛られてな!死にたくはないだろ!?」


船乗り1
「俺らはあんたが着けてる飾りが欲しいだけだ。抵抗しなければ怪我はさせない。」

船乗り3
「だぁからおめぇは甘いんだよ!おい坊ちゃん!死にたくなければ大人しくしてるんだな!!」

船乗り2
「おい!良いこと思いついたぜ!こいつをマストに縛って、こいつの親からたんまり身代金を頂くってのはどうだ?」

船乗り3
「お!そりゃあいい!酒も肉も女も買い放題だ!!」

船乗り1
「お、おい!装飾品だけって」

船乗り3(遮るように)
「おめぇは黙ってろ!八つ裂きにするぞ!」

船乗り2
「おら!さっさとマストに縛りつけろ!」

船乗り1
「わ、わかったよ…」

船乗り2
「へ!ビビって何も言えねぇってか、このお坊ちゃん様はよ!」

ディオニュソス
「君たち。お金が欲しいのか。」

船乗り3
「あぁそうだよ!お前と違って貧しいんでな!さぁ、さっさと家はどこか教えろ!さもねぇとその腹に穴が開くことになるぜ!飾りだけでも構わねぇんだからな!」

ディオニュソス
「ふぅん」

船乗り2
「おい、こいつさっきから笑ってるだけで全然ビビってねぇぞ。」

 

船乗り3
「ちっ。舐めくさりやがって。おらっ!!」

ディオニュソス
「ぐっ!!かはっ」

船乗り1
「お、おい!やめろって!なんか変だぞ!!」

ディオニュソス
「ふふふ。君たちは本当に貧しいんだね。」

船乗り3
「あぁ!?なんだとこいつ」

船乗り2(遮るように)
「おいやめろ!なんか…嫌な予感がする!」

船乗り3
「なんだよ。こいつのビビリ癖が移ったか?」


船乗り1
「俺も嫌な感じがする…。さっきから海風が吹いてないぞ。」

船乗り3
「なに!?」

船乗り2
「海風が止むと不吉が起こる…。船乗りなら常識だろ!おい、こいつの縄解いた(ほどいた)方がいいんじゃねぇのか!?」

船乗り1
「い、今解く!!」

ディオニュソス
「その必要は無いよ。」

船乗り1
「え…?」

船乗り2
「な、なんだこの音!どっから聞こえて…!う、うわぁ!!」


ディオニュソス
「この笛は僕を気に入ってくれたみたいでね。不思議な音を奏でてくれる。例えば、こうやって縄を解いてくれたり。ありがとう、手が痛かったから助かったよ。あ、折角だから、君たちに続きを聴かせてあげる。じっくり聴いてほしいから、そこで大人しくしててね。(笛を吹く)」

船乗り3
「なんだこれ!?この蔓(つる)どっから湧いて来やがった!!」

船乗り2
「お、おい!なんだこいつら!!」

ディオニュソス
「あぁ、この子たちは僕の友達。いつも僕の笛を聴きに来てくれたり、島であったことを話しに来てくれるんだ。可愛いだろ?」

船乗り1
「不思議な笛に、動物たち…あ、あなたは一体…」


ディオニュソス
「僕?僕はディオニュソス。ゼウス様の計らいで、お酒の神としてこの島の統治を任されてる。一応、ワインが自慢かな。」

船乗り1
「ゼ、ゼウス様だって…!?」

船乗り2
「やべぇ!早く蔓を…!くっ…よし取れた!逃げろ!!」

船乗り3
「こっちも取れた!雷に打たれて死にたくねぇ!!!」

ディオニュソス
「ふふふ。そんなに慌てて海に飛び込んだら溺れてしまうよ。それは僕からのプレゼント。」

船乗り1
「おい!お前ら…か、体が!!」

船乗り2
「どうなってるんだ!体が!腕がぁぁ!!」


ディオニュソス
「人間の肌じゃやっぱり鱗にはならないか…魚じゃないから…うーん…イルカ、とでも呼ぼうか。」

船乗り3
「お許しを…!どうか人間に」(途中で姿が変わりきる)

ディオニュソス
「そうだね。君たちが善い行いをしたら、ゼウス様に頼んであげてもいいよ。元に戻すのはゼウス様じゃないと無理なんだ。それまで、海を堪能してね。」

船乗り1
「な、なぜ俺だけ…?」

ディオニュソス
「ん?あぁ。君は最初から僕に危害を加えるつもりが無さそうだったし。縄も解こうとしてくれたからね。特別に許してあげる。さぁ、船を砂浜につけて僕を戻してよ。その後は好きなところへ行っていいから。」

船乗り1
「ありがとうございます…わかりました。」

〜4秒くらい間を空ける〜

ディオニュソス
「よっと。ありがとう。そうだ、折角だから、僕の杯(さかずき)でここで作られてるワインを少し飲ませてあげるよ。」

船乗り1
「え、良いんですか?」

ディオニュソス
「うん。なかなか面白かったし。」


船乗り1
「な、なんて綺麗な杯(さかずき)なんだ…」

ディオニュソス
「これは特別な杯でね。僕のお気に入りなんだ。」

船乗り1
「ワインが中から湧いて…!?」

ディオニュソス
「さ、どうぞ。」

船乗り1
「ありがとうございます。頂きます…。」

ディオニュソス
「どう?美味しい?」

船乗り1
「美味しいです!………あれ?私はここで一体何を…?」
 

ディオニュソス
「さぁ?僕がここに来た時には、君はこうして立ってたよ?覚えてないの?」

船乗り1
「おかしいな…何も思い出せない。」

ディオニュソス
「この船も多分君のだよ。漁師なんじゃないの?」

船乗り1
「あ……そうか…そうだ。俺は漁師だ。なんでこんなところに…。悪いな、変なこと言っちまって。」

ディオニュソス
「良いんだよ。気をつけてね。」

船乗り1
「おう!あんたも暗くなる前に帰りなよ!」


〜3秒くらい間を開ける〜

ディオニュソス
「ふふ。あとでお父様にお話ししよう。次にお父様のカラスさんが来るのはいつだったかな?…あぁ…僕も話し相手が欲しいなぁ…できれば綺麗な女の人にお嫁さんに来てもらって、一緒にぶどう狩りでもしてのんびり過ごしたいなぁ…。」

世話役
「ディオニュソス様!こちらにいらっしゃいましたか!」

ディオニュソス
「やぁ。どうしたんだい?そんなに慌てて。」

世話役
「どうしたではありませんよ。ゼウス様とのお約束の時間をとうに過ぎておりますぞ!」


ディオニュソス
「あ!今日だっけ!お父様に笛を聴かせる日」

世話役
「左様でございます。セメレ様もお待ちです。」

ディオニュソス
「あれ。お母様も来てるの?珍しいね。いつもはお父様の女癖に怒って来ないのに。」

世話役
「ディオニュソス様は、半分は神の血を引いておられるとは言え、やはり心配なのでございましょう。」

ディオニュソス
「お母様は心配症だなぁ。そこが人間らしいけど。じゃあさっきの出来事はお父様と2人の時に話した方が良さそうだね。」

世話役
「何か面白いことでもありましたかな?」


ディオニュソス
「うん。なかなかにワクワクしたよ。」

世話役
「それはそれは。ゼウス様は面白いお話がお好きですからねぇ。」

ディオニュソス
「ねぇ。僕もそろそろお嫁さんが欲しいんだけど…どう思う?」

世話役
「それは良いことですね。やっとその気になってくださって嬉しゅうございます。ではさっそく、美しい娘たちを集めましょう。」

ディオニュソス
「うーん、なんかそういうのは嫌だなぁ。」

世話役
「やれやれ。ではお気に召す娘がおりましたらお知らせください。」


ディオニュソス
「うん。いつもありがとう。」

世話役
「これがわたくしの仕事でございます。…おや?あそこに見えるのはアテネの船ではありませんか?」

ディオニュソス
「あぁ本当だ、もうそんな時期なのか。毎年何人も生贄をミノタウロスに捧げてて、よく民(たみ)が減らないよね。」

世話役
「なんでも、男女7人ずつ連れて来ているそうです。」

ディオニュソス
「ふーん。つまりは奴隷か。あんまり好きじゃないんだよなぁそういうの。」

世話役
「いけませんぞ。神であるあなた様には慎重に言葉を選んでいただかないと。」


ディオニュソス
「みんなの前では気をつけるよ。さぁ行こう。お父様をあんまり待たせると怒って雷落とされちゃう。」

世話役
「そうなる前に。さ、参りましょう。」
 

ディオニュソスからこの話を聞いたゼウスはすっかり気に入り、コップ座として星空に記し(しるし)ました。

一方その頃、船の中では、ある話し合いがもたれていました。

どんな話し合いかは、次回のお楽しみといたしましょう。

また聴きに来てくださいね。星たちはいつでも、あなたを待っています。

 

 


時間は目安です。

 

 

第1話はいかがでしたでしょうか。

イルカになった船乗りたちは、後のお話に出てきますのでぜひ覚えておいてあげてください。

 

星を見に行く時の小ネタになれば幸いです(*vωv)

 

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