ルール
・性別変換・一人称変換・語尾変OK
・使用の際には下にコメントを残していただき、使用先で「(台本のタイトル)」 「まつかほの台本」(もしくは「作者まつかほ」)を明記してください。このホームページのURLも併記してくださると嬉しいです。
・使用場所のリンク等を貼ってくださると僕も聞きに行けるので助かります!
・BGMはご自由につけていただいて構いませんが、BGM作者様がいる場合には許可を取ってからつけてください。
・読めない漢字はご自分でお調べください。
・詳しくは台本使用に関する注意事項をお読みください。
「想い」というのは不思議なもので。
音も無ければ形も無い。
とても不確かなモノであるのに
「なくしたくない」と強く願ってしまう。
様々な音や形に「想い」を入れて
大切な何かに伝えたくなったり、捨てられなかったり。
あなたも、何かに閉じ込めた「想い」を
大切にとっておいてしまうタチじゃあありませんか?
ある人は音楽に乗せて。
ある人は絵の中に閉じ込めて。
ある人は言葉に託して。
ある人は記憶の中に秘めて。
そんな不確かな「想い」を形にしたいと強く願った少女がいた。
その少女は、どこにでもありふれたその「想い」を形にする為に、何ができるのか酷く悩んでいた。
何せ少女は声が出せない。音符は読めない。絵も描いたことがない。
知っているのは、ベッドの上で体を動かせずに寝ている時間が大半だということ。調子が良い時には、少しベッドを起こして外を見ることができるということ。
その景色以外、見たことがないということ。
ある日少女は、鈍くなった感情が膨れ上がるのを感じた。
いつもの時間のいつもの景色に、見慣れない青年がいたからだ。
いつもなら背景の一部のまま、記憶にも残らないのに、
その日はその青年が目に焼き付いて離れなかった。
次の日も、その次の日も、青年は同じ場所にいた。
ある時、どこを見ているのかと気になって青年の視線をなぞった。
その先には、溶け始めた飛行機雲があった。
青年に少女は見えていなくとも、
少女は青年に親しみすら感じる程に「想い」は強くなっていた。
どうにかして伝えたい。
「想い」は時たま、思いがけない運命を引き寄せる。
その日は天気が良く、体の調子も良いからと窓が開け放たれていた。
小さなテーブルには紙が一枚。
いつもの時間、いつもの場所に青年が見える。
少女は筋肉の無い細い腕で、ヨタヨタな紙飛行機を折った。
遠い昔に、両親が作ってくれた紙飛行機を思い出しながら、青年に届けと風に願った。
青年の視界を風が遮る。
風の始まりを探した青年は少女を見つけ、目を細めた。
少女はそれから毎日、ヨタヨタな紙飛行機を折った。
青年が折り紙を持って少女の部屋を訪ねて来る。
少女は折り紙に「想い」を込めた。
声を出せない少女のヨタヨタな紙飛行機を嬉しそうに持ち帰る青年は
まるで空の向こう側を見ているような目をして言った。
「飛行機雲の向こう側には、何があるんだろう。飛行機雲を抜けた先から見えるのは、きっと今見ている世界じゃなくて、みんなが知らない世界だと思うんだ。」
外の世界を知らない少女には、青年の言葉がとても難しかった。
それでも、きっとそれは素晴らしい世界だろうと思った。
思うように動かせない体を置いて、青年と飛行機雲の向こう側に行って、知らない世界を見てみたい。
秘めた「想い」を青年に渡す。
優しく笑ってそのヨタヨタな紙飛行機を受け取る青年を見て、少女は想う。
いつか、あの飛行機雲の向こう側へ行けたら。そしたらどんなだったか話しに行くね。
次の日から、青年は少女の元へ来なかった。
空には溶けかけた飛行機雲が一筋登っている。
少女は産声を上げる赤子のように泣いた。
ヨタヨタな紙飛行機を握り締めながら少女は想う。
青年の目には、どんな世界が視えているのでしょうか。
少女の目には、どんな世界が視えていたと思いますか。
あなたの「想い」は、どんな形をしていますか?
時間は目安です。
90秒前後で読める「雲の国境」のお話を
別視点を加えてニュアンスの違うお話にしてみました。
読む人によって様々な解釈ができるお話にしてあります。
なんとなんと!!!
絵本画家としてご活躍中のなかのちゃい様から
この台本のファンアート(下記画像)を頂きました!!!(掲載許可取得済み、無断での保存、転載、転用、自作発言等お控えください)
感激です(ToT)
なかのちゃい様の可愛い作品はぜひTwitterメディア欄からご覧ください @chainakano
少女の遠影、白い飛行機雲、すべてを包み込み決して交わることのない海と空…
こんなに素敵な絵を贈ってくださって、本当に本当に有り難うございます(感涙)
宝物です!