ルール
・一人称、語尾変OK
・物語に沿ったアドリブは大歓迎です
・使用の際には下にコメントを残していただき、使用先で
「(台本のタイトル)」
「まつかほの台本」(もしくは「作者まつかほ」)を明記してください。
このホームページのURLも併記してくださると嬉しいです。
・コメント欄に使用場所のリンク等を貼ってくださると僕も聞きに行けるので助かります!
・BGMはご自由につけていただいて構いませんが、BGM作者様がいる場合には許可を取ってからつけてください。
・読めない漢字はご自分でお調べください。
・詳しくは台本使用に関する注意事項をお読みください。
江戸初期。
言葉遣いがわからないので、現代っぽいのは許して下さい(´;д;`)
ゆき姫☆:15歳。政略結婚の道具にされるのが嫌で、城を抜け出す。気が強く、おてんばではあるが、身体が弱く世間を知らない。ゆえに突拍子もないことをして周りを困らせることが多々ある。
一太★:今で言う、大衆食堂を営んでいる青年。幼い頃に両親を亡くし、1人で店を切り盛りしている。料理が美味いと評判で、いつも朝早く、夜は遅くまで働いている。しっかり者であるがゆえに時として残酷なことでも受け入れてしまう。
十兵衛◆: ゆき姫の護衛。身体が弱い姫を守る為に父である城主が護衛隊をつけ、そのまとめ役もしている。姫を守るという使命をまっとうするが、真面目過ぎるがゆえに、人の話をあまり聞かない。
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用語解説
○祝言(しゅうげん)を挙げる
今で言う、結婚式を挙げるの意味
○未(ひつじ)の刻
今で言う15時前後
おやつの時間
○戌(いぬ)の刻
今で言う20時前後
子供が寝る時間だった
○イカノボリ
今で言うタコアゲのこと
江戸時代初期では、イカと呼ばれていたが、あまりの人気に、事故が多発した為、禁止令が出たらしい。
それでもやめられなかった民衆が
「これはイカじゃありません、タコって言うんです」と言い訳して、イカからタコに名前が変わった、とかなんとか。
ゆき姫☆・・・
一太(壱哉いちや)★・・・
十兵衛(十吾じゅうご)◆・・・
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☆いっつ…!はぁ…どうしたものか…。
★どうかなされましたか?
☆なんでもない!わらわに近寄るな!
★…貴女はゆき姫様ですね?
☆っな!…わかっているなら、なぜ声をかけた!無礼だぞ!
★姫様が地面に座り込んで、困っていた様子でしたので…お付きの人もいらっしゃらないようですし。
☆な…なんでもない!!
★そう仰らずに。足を痛めたのですか?
さっきからかばっているようですが?
☆なんでもないと言っている!!!
★…噂通り、人を寄せ付けないお人だ。
大丈夫です。何もしません。
姫様に何かすれば私の首がなくなってしまいます。
少し、足を見せて下さい。
☆くっ……つっ!!!
★あぁ…どうやらくじいてしまったようですね。
少しお待ち下さい。
(持っていた手ぬぐいを慣れた手つきで足に縛りながら←読まない)
★しかしなぜ、姫様がお付きの人もつけずに、こんなところでお怪我をなさったのです?
☆……さくらを…桜を見たかったのだ。わらわは体が弱いと言うて、みな、外へはなかなか出してくれぬ。
☆しかし、ここの桜が綺麗だと、侍女(じじょ)が幾度(いくど)も言うものだから…。
ここの桜が、どうしても見たくて、抜け出して来たまでは良かったのだが…。
★土手を下りきれずに滑ってしまったのですね。
☆…。
★せっかくの美しいお着物が台無しになってしまいますよ。
さ、できた。とりあえずお城までの応急処置ですが…。立てますか?
☆子供扱いするでない!
わらわももう15!縁談がいくつも来ている身だ!
★それは失礼いたしました。
では、姫様は近いうちに、さぞ名のあるお方と祝言(しゅうげん)を挙げるのでしょうね。
☆そ…そうだ!!
★これはめでたい。
☆…。
★どうかなされましたか?浮かない顔をしていらっしゃる。
☆……ここの桜は本当に見事だ。
★そうですね。
ここはあまり人も来ない場所ですし、月明かりに照らされて、この桜が一本、スッと立っている様などは、本当に美しいですよ。
☆…そなたは、よくここに来るのか?
★あ、ええ、そうですね。
たまに1人になりたくて、昔からよくここに来るんです。
☆そうか…。
おい。そなた、名はなんと言う。
★ん、あぁ、これは名乗りもしないで失礼いたしました。
一太(いちた)と申します。
ここから少し行ったところで、飯屋をやらせてもらってます。
☆一太だな。
そなた、またここに来るか?
★そうですね…来ると思いますよ。
☆…よし!わらわは決めたぞ!
そなたに町の様子を聞かせてもらいたい!
これは姫として、当然の務めだ!うん!
また、わらわはここに来る!
その時、そなたも必ず来るのだ!
★いや、必ずと言われましても、いつお見えになるのかわかりませんし…
それに、縁談が来ているのでしょう?
私のような身分の者と会っていると知れたら、私だけでなく姫様も大変なことになります。
☆問題ない!!
また、こっそり抜け出して来れば良いのだ!
今度までに、もっと動きやすくて、目立たない着物を、侍女(じじょ)に用意させる!
★…怪しまれますよ、多分。
☆案ずるな!わらわとて馬鹿ではない!
侍女を言いこめるなど、なんの問題もないわ!
よいな!わらわが来るときはそなたも来るのだぞ!
★いや、ですから…いつお見えになるのかが…
☆あぁ、そうか…ふむ…ではこうしよう。
城で、未(ひつじ)の刻(こく)にイカノボリをあげる!
これでどうだ?
★また大胆な…
☆みなやっているのだ。わらわがやっていても誰も怪しむまい。
★確かに、流行ってはおりますが…
☆ええい!くどくどと女々しいぞ!
わらわが決めたのだ!
そなたは従え!
★わ、わかりましたよ。
☆わらわは戌(いぬ)の刻にここに来る!
よいな!必ず来るのだぞ!
◆姫様!!!
☆お、どうやら思ったより早く見つかってしまったようだ。
◆姫様!みなで方々(ほうぼう)を探して回っていたのですよ!
一体何があったのです!?
まさか…!!
☆違う違う!刀から手を離せ十兵衛(じゅうべえ)。
この者は怪我をしたわらわに手当てをしてくれていたのだ。
わらわはここの桜が見たくて、抜け出して来たのだ。
◆あぁ…そうだったのですね。
叱られるのは私なんです!
勝手にどこかへ行くなんておやめ下さい!寿命が縮まってしまいます!
☆す、すまぬ。
どうしてもここの桜が見たくてな…。
◆それでしたら、言ってくださればお供いたします。
姫様に万が一があったら、この十兵衛、殿に合わせる顔がなくなってしまいます。切腹ものですぞ!
☆わかったわかった!
そう怒るな。みなにはきちんと謝るから。
◆はぁ…お身体に障ります。帰りますぞ。
そなたも悪かったな。
★い、いえいえ。大きな怪我でなくて良かったです。
★その後しばらく、城にイカノボリがあがることは、無かった。
自由のない生活であろう姫様の、いっ時の戯言(たわごと)だと思い、私は忘れることにした。
★それでも、未(ひつじ)の刻には外に出て、城を見るようにした。
いつ、姫様のイカノボリはあがるのだろうか。
〜4秒くらい間を開ける〜
★どれくらい月日が経っただろうか。
桜の樹の下でのことが、
だいぶ昔のことのように感じる。
★ふと、思い立って、未(ひつじ)の刻よりも少し早かったが、城を見てみることにした。
すると、大きなイカノボリがあがっていた。
★はぁ…!はぁ…!
☆遅いぞ!
★す、すみません。これでもすっ飛ばして来たんです…!
☆全く、約束を忘れたのか!
★わ、忘れるなんてとんでもない!
☆…そうか。
随分かかってしまった…。
もう桜も散ってしまったな…。
★そうですね。
もうすっかり葉桜です。
でも、もう少しすれば、今度は甘い実を付けます。美味しいんですよ。
☆それは興味深いな!
ぜひわらわも食(しょく)してみたい!
★なんでも、清(しん)の国からやって来た桜とか。しかし気候が合わずに根付かなかったらしく…この樹は珍しいようです。赤い実のせいか、皆、気味悪がっているくらいです。
☆ふむ…確かに想像ができぬな…どんな実なのか、どんな味なのか。とても楽しみだ!
★…ところで、そのお着物は…。
☆あぁ。
どうだ?似合っているか?
★いやぁ。以前お会いした時とは別人のようで…どうなさったのですか?
☆侍女に用意させると言っただろう?
祝言(しゅうげん)前に、少しでも体を強くして、父上の恥にならぬようにしたいから、動きやすい着物を作れと言って作らせた。
★では、縁談がまとまったのですか?
☆…ここから、少し離れた国の大名がわらわを気に入ったようでな…
すぐにでもと言って来ておる。
★それは…大変めでたいことではないですか!
それでしたら、私のような者と会ってると知れたら姫様が…!
☆よいのだ!
向こうには、身体の具合を整えてからと伝えている!気づかれるわけがあるまい。
★それでしたら尚更、こんな時間に出歩いてはお身体に障りますよ!
☆…。なぁ、一太。
わらわは、この桜から離れるのが惜しい…。
四季折々の姿を見たい。月に照らされた桜も、とても美しいだろうな…。
ずっと城の中にいては、わからない美しさだ。
★それは…そうですが…。
☆わらわはどこぞの大名なんぞに嫁ぎたくないのだ!
わらわはわらわだ!
父上の道具ではない!
わらわも生きている!
この桜のように…一太のように…
わらわも、わらわの為に生きたいのだ…!
なぜそれが叶わぬ…!
☆同じ人であるのに、なぜ姫に生まれたばかりに、外をかけ回れないのだ!
恋しいものと…離れなければならないのだ!
…わらわは…!!
◆姫様!やはりここでしたか!!!
☆な!十兵衛!?どうして…!!
◆最近、姫様の様子がおかしいと侍女から聞いて、護衛を増やしておいて正解でした…!
★…しっかり見抜かれていたようですね…。
☆う…。
◆貴様はいつぞやの小僧!
姫様をどうするつもりだ!!!
☆違う十兵衛!一太は関係ない!!
話を聞くのだ!!
◆姫様はお下がりください!
小僧…姫様に何をするつもりだった!
答えによってはここで切り捨てる!!
☆十兵衛落ち着け!わらわが自分で抜け出して来たのだ!
★[私の後ろには手下と思われる侍が3人。
丸腰では、どうあがいても逃げられないな。
しかし、このままでは、姫様も罰を与えられてしまう…。]
★姫様に外の世界を見せてやりたくなった。ただそれだけですよ。
◆貴様!拐かし(かどわかし)は重罪だぞ!!わかっているのか!
★[やはりダメか…こうなったら…]
☆十兵衛!わらわは自分の…
(かぶせるように。急に賊っぽく)
★ちっ。たっぷり身代金を積んでもらおうと思ってたのになぁ?
◆な…!貴様ぁ!!!
おい!ひっ捕らえろ!!打ち首にしてくれるわ!
☆やめろ!一太は関係無い…!一太は!!
◆姫様、城へ戻りますぞ!!
賊の言うことなど、真に受けてはなりませぬ!!
☆離せ!一太はわらわの…!!
★おいお姫さん。どこぞの大名にもらわれるんなら、せいぜい可愛がってもらうんだな…!
☆い、一太……。なぜ…。
★[姫様。どうか、幸せになってください。どこにいても、あなたは世界で一番、美しい花です。]
〜4秒くらい間を開ける〜
★しばらく時が流れ、桜には赤く、艶やかな実が鈴なりになっていた。
血のような、真っ赤な色の実だった。
その下に、桜色の美しい着物を着た姫が1人、静かにそれを見つめていた。
その手には、何度も読み、しわくちゃになった文(ふみ)がぎゅっと握られている。
★手を伸ばすでもなく、実を食べるでもなく、その瞳(ひとみ)に映るのは、過去。
たった2度しか会わずとも、確かに感じた、愛しい気持ち。
☆一太…。
わらわは明日(あす)、ここを発つ(たつ)。
そして、よく知らぬ大名と祝言(しゅうげん)を挙げる。
ここにこうして抜け出してくるのも、これで、最後だ…。
☆なぜ…なぜあの時あのような嘘をついたのだ…!
なぜ…そなたが死なねばならぬのだ…!
わらわのせいで…わらわのせいでぇ…!
一太…あぁぁぁ!!(しばらく泣き崩れる)
(少し落ち着いてから)
☆…もし、わらわの願いが1つ叶うのなら、生まれ変わった時には、そなたのそばで一生を終えたい。
どこにいても、どんな姿でも、そなたを必ず見つけよう。
☆会いたい…できることなら、今すぐそなたの元へいきたい。
しかし、生きねば。
そなたのいる時代(とき)に、生まれ変われるように…。
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〜5秒くらい間を開ける〜
(時代が変わります)
★葉が揺れるのは風のせいか
それともこの朽ちた城壁の向こうに何者かがいるのか
それとも…私の心のざわめきか…
☆また来たの?
★時代(じだい)が変わり
人が変わっても…
人は同じことを繰り返すんだな…
魂は同じ、ということなのか…
☆あなたはいつもここに来て、壁の向こうからぶつぶつと語る
ここからじゃ、どんな人なのかは見えないけど
★もう途方もなく永く(ながく)生きているように思うが…これほど生きるのが苦しい時代(とき)は初めてだ…
◆おー!!やっぱりここにいたのか!
壱哉(いちや)ぁ、みんなお前を探してるぞ?
早く行こうぜ!桜の下なくなっちまうぞ!
★あぁ、すまない十吾(じゅうご)。すぐ行くから、先に行っててくれ。
☆うるさい足音が1つ遠ざかる。人は「花見」というのが好きね。花が散るだけなのに。
★次の世に生まれ落ちる時は、どんな姿であろうか。君に…会えるだろうか…。
☆私はどんな人なのか見たくなって、崩れた城壁の上に飛び乗った
★なっ!?…なんだ。ねこ、だったのか…
☆なんだろう…なにか今…知ってる風景が…
クルクルと散る花びらと一緒に、足音が遠ざかる。
☆「にゃー…」
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〜5秒くらい間を開ける〜
(時代が変わります)
☆「最近雨ばっかり…。これじゃあ今年の桜は、すぐに散っちゃうかな…」
☆私はお気に入りの場所へ行く。
子供の頃、おばあちゃんとよく来た、一本の桜の木。
☆おばあちゃんは、この桜には悲しい恋のお話があるんだよと言っていた。
この辺だと、昔から言い伝えられているお話らしい。
今は1人で桜を訪ねる。
☆「ん?なんだあれ」
☆見たことのないダンボール箱が桜の下に置かれていた。
そっと近づいて覗くと、1匹の猫が横たわっていた。
☆顔だけ持ち上げて、こちらを見つめる。
身体に、散った桜の花びらが無数に付いていて、まるで桜色の着物を着ているようだった。
☆「足、怪我してるの?もしかして、捨て猫?」
☆猫は鳴き声を上げずに、ただじっとこちらを見つめる。
☆…あぁ。
☆…そなたも、粋なことをするな。
★にゃー
☆わらわも、会いたかったぞ。
☆わらわ達は、昔話になっているらしいぞ、一太。
☆ようやっとそなたに会えたのだな。これからは、ずっと、そばにいてくれるな。
★にゃー
おわり
時間は目安です。
この猫が一太だったのかどうかは、
誰にもわからない。
それでも、1人の人間を幸せにしたことには、違いないのです…。
本文中にもありますが、
さくらんぼのなる桜が中国から日本にやって来たのは江戸初期。
しかし当時は日本の気候と合わないなどの理由で普及しなかったようです。
その中で根付いた一本の桜の樹。
当時の人からすると得体の知れない実をつける、得体の知れない桜だったでしょうね。
その下で繰り広げられる時代を越えた物語。
あなたは何を感じたでしょうか。
使用、コメント、お待ちしております。